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『WAITING TO EXHALE ため息つかせて』 全曲ベイビーフェイスがプロデュースしたサントラ アーティストはすべて女性で新人からレジェンドまで揃った高火力なラインナップ やっぱりベイビーフェイスは女性の扱いが上手(1995年作品)

概要

映画「ため息つかせて」について

テーマ曲が全米チャート14週連続1位という記録を持つあの映画「ボディーガード」に続き、ホイットニー・ヒューストンが選んだ出演作品が「ため息つかせて」。女流作家テリー・マクミラン(共同で脚本も担当)のベストセラーを、映画「ジェイソンズ・リリック」で怖い父親役を演じたフォレスト・ウィテカーが監督した作品(これで長編映画監督デビュー)。

批評家からも高評価で8,000万ドル以上の興行収入を上げたもんで、他の作品もいくつか映画化されたテリー・マクミラン。ジャム&ルイスがサントラを担当した映画「ステラが恋に落ちて」も彼女が原作。「Getting to Happy」という続編の小説もあって、同じメンバーで続編の映画も作るはずだったんだけど、ホイットニーが亡くなっちゃったんだよね、ほんと残念だった。

映画の出演者はホイットニーの他に、「ボーイズン・ザ・フッド」で主人公の母親を演じたアンジェラ・バセット、「ブーメラン」で足の指が汚い女を演じたレラ・ローション、サントラ好きなら知ってる「リヴィング・ラージ」や「クラス・アクト」に出演してたロレッタ・デヴァインといったブラックムービーではお馴染みの女優さんたち。

男性俳優陣もグレゴリー・ハインズやウェズリー・スナイプスといった豪華な顔ぶれ、ジャンカルロ・エスポジートっていうスパイク・リーの映画でお馴染みの俳優さんも出演してる。このあたりはフォレスト・ウィテカーが監督だから出演してるって感じがある、ウェズリー・スナイプスとかチョイ役ってわけじゃないのにノンクレジットだし。

黒人女性たちが主役の映画だけど、人種差別問題を取り上げた作品じゃない。みんな社会的に成功してる女性たちで、どちらかと言えばセレブ寄り。そんな彼女たちがイケてる男を探すっていう、良い意味で普通の内容の映画。タイトルの「ため息つかせて」は、いわゆる安堵のため息をつきたいっていう意味ね。

サウンドトラックについて

「ドキッ!丸ごとベイビーフェイス 女だらけのサントラ大会」なんて懐かしい番組タイトルをパクりたくなるくらいのアルバム。ベイビーフェイスにとってサントラアルバム全体をプロデュースするのは初めてで、ジャズのスタンダードナンバー「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を除くすべての曲をベイビーフェイスが書いてる(共作曲もあり)。女性の視点で描かれた映画だし出演してる女優陣も豪華なら、サントラも女性アーティストだけで豪華に作ろうよってなるのは至極当然。

ビルボード200のアルバムチャートで5週連続、R&Bのアルバムチャートで10週連続の1位を記録したサントラで、7×プラチナ(700万枚の売上ってことね)認定されたモンスターアルバム。7曲もシングルカットされてゴールド認定やプラチナ認定されるようなナンバーワンシングルになった曲もあるし、グラミーとか色んな音楽賞でノミネート&受賞した曲も多数。

このブログで紹介するサントラって廃盤になってることがほとんどなんだけど、このアルバムはまだ現役。アマゾンにいたっては、限定でメガジャケ付きを発売してる。それくらい今でも売れてるサントラなんだけど、それでも「ボディーガード」には遠く及ばない。あの売上を超えるサントラなんて、今後一生出てこない気がする。

映画音楽を担当したのもベイビーフェイス。初めての経験だし、偉大な原作の映画化に対するプレッシャーもかなり大きかった様子。音楽の方向性やらトラックの雰囲気やら諸々について、レコード会社の偉い人(クライヴ・デイヴィス)や監督のフォレスト・ウィテカー、それからホイットニーからの承認も必要だったみたいで苦労しただろうね。

トラックリスト

  1. WHITNEY HOUSTON
    Exhale (Shoop Shoop)
  2. WHITNEY HOUSTON
    Why Does It Hurt So Bad
  3. TONI BRAXTON
    Let It Flow
  4. ARETHA FRANKLIN
    It Hurts Like Hell
  5. BRANDY
    Sittin’ Up In My Room
  6. TLC
    This Is How It Works
  7. MARY J. BLIGE
    Not Gon’ Cry
  8. CHAKA KHAN
    My Funny Valentine
  9. SONJA MARIE
    And I Gave My Love To You
  10. SWV
    All Night Long
  11. CHANTÉ MOORE
    Wey U
  12. PATTI LaBELLE
    My Love, Sweet Love
  13. FAITH EVANS
    Kissing You
  14. FOR REAL
    Love Will Be Waiting At Home
  15. SHANNA
    How Could You Call Her Baby
  16. WHITNEY HOUSTON & CECE WINANS
    Count On Me

トラックリスト詳細

Exhale (Shoop Shoop) ②Why Does It Hurt So Bad

主演を務めたホイットニー・ヒューストンの楽曲から

ホイットニーの代名詞みたいな大ヒット曲「I Will Always Love You」以来久しぶりの全米チャート1位になった、サントラのファーストシングルでしかも初登場1位(当然R&Bチャートでも同様)を記録した①。でも1位だったのは1週間だけで、そのあとは11週間ずっと2位(R&Bチャートは8週間連続1位)で当時の連続2位最長記録を樹立。じゃあその時の1位はって話だけど、16週連続1位というこちらも当時の最長記録だったマライア・キャリーとボーイズ・Ⅱ・メンのデュエット「One Sweeet Day」。印象が強すぎる「I Will Always Love You」の陰に隠れちゃってるけど、この曲も色んな国でヒットしてるし評価も高い。

ホイットニーのところに曲を聴く前に歌詞がFAXで流されてきたらしいんだけど、そこに「Shoop Shoop」ってめっちゃ書かれてるからベイビーフェイスが仕事しすぎておかしくなったのかと思った、ってホイットニーが冗談っぽく言ってた。おかしくはなってなかったけど、全然歌詞が思いつかなかったベイビーフェイス。でも「シュー」って音が何か聞こえてきたらしく、意味なんてないけどこの歌詞にしようって思ったんだって。

ミュージックビデオを監督したのは、ホイットニー直々の依頼で映画本編と同じくフォレスト・ウィテカー。当然映画のプロモーション映像も入ってくるんだけど、歌詞に合わせて良いカットを差し込んでくる。まあ本人が撮ったんだから、そのあたりはよくわかってるよね。

とてもいい曲なんだけど、最初は演技に集中するためにホイットニーはサントラに参加するつもりはなかったそう。でもベイビーフェイスがこの曲を聴かせて説得して、なんとか同意に至ったらしい。こんなにヒットしたんだから、ホイットニーも歌っておいて良かったよね。おそらくベイビーフェイスもお気に入りの曲だと思う、本人のアンプラグドのライブでもカバーして歌ってたし。

②もサントラからの最後のシングルとしてリリースされてる。実は既に2年前にベイビーフェイスがホイットニーに提供してた曲なんだけど、その時はこんな内容の曲は歌いたくないって拒否したんだって。その頃ってボビー・ブラウンとの結婚が上手くいってなくて、殴られたのどうのって話もあった時。そりゃ嫌だろうね、内容がリアル過ぎるもん。

It Hurts Like Hell ⑧My Funny Valentine ⑫My Love, Sweet Love

60~70年代から既にスターだったレジェンドたち

アルバムからの6枚目のシングルだったアレサ・フランクリンの④。アレサにベイビーフェイスはちょっと甘すぎるんじゃないかと思ってたけど、そこはクイーン・オブ・ソウルと呼ばれる大御所、大人のスイーツだった。他のシングルと比べるとそれほどヒットしなかったけど、批評家からの評価は高い。ベイビーフェイス自身もお気に入りの曲で、アレサと一緒に仕事ができたことも光栄だったと言ってた。

チェット・ベイカーの歌唱が有名なジャズスタンダードを、こちらはクイーン・オブ・ファンクとして知られるチャカ・カーンが歌う⑧。ちなみにヴァレンタインはチョコレートの日じゃなくて、この曲が作られたミュージカルに登場する人物のこと。あと、ジョジョの登場人物のファニー・ヴァレンタインはここからの引用。ベイビーフェイスはこの曲をプロデュースするのにとても苦労したみたい。ジャズっぽくするのに昔のヴァージョンを研究して、自分でも演奏できるように努力したらしい。これだけ有名な曲を手掛けるってプレッシャーあるだろうな。シングルリリースされなかったけど、R&Bエアプレイチャートで66位を記録。

タイトル通りとってもスイートな曲を、これまたゴッドマザー・オブ・ソウルなんて呼ばれてるパティ・ラベルが歌う⑫。レジェンドは何かしら二つ名を持ってるもんだね。こんなに展開が少なくて地味な曲なのに、これだけ聴かせられるなんて凄い。パティ・ラベルの変幻自在の歌声とか後半の爆発する感情表現とか、二つ名は伊達じゃないってことだ。

This Is How It Works ⑩All Night Long ⑭Love Will Be Waiting At Home

個性派、実力派、それとデビューしたてのコーラスグループ 

ベイビーフェイスと相棒のLAが設立したLaFACEレーベルからデビューして、90年代に一世を風靡したTLC。この頃はセカンドアルバムの「CrazySexyCool」をリリースして絶好調だった(でも破産申請したのもこのあたり)。⑥はシングルリリースはされなかったけど、R&Bのエアプレイチャートで60位。メンバーのレフト・アイは、自分が参加してない曲やラップパートがやけに短い曲が多かったことにしょっちゅう愚痴ってたけど、この曲では比較的長めに彼女がフィーチャーされてる。

同じく90年代を代表するガールズグループのSWV、こちらもこの頃はファーストアルバムからのシングルが立て続けにヒットしてて勢いがあった時期。ベイビーフェイスの作品はおそらく初めての⑩、なんとなく優等生なイメージがある彼女たちに合わせてか、キレイなスローバラードを提供(でも歌詞は一晩中ヤるぜって内容)。

94年にデビューしたばかりだったフォー・リアル、「Candy Rain」で有名なソウル・フォー・リアルっていう男性コーラスグループもいるからややこしい。ブライアン・マックナイトとか色んな人にプロデュースしてもらったデビューアルバムが大ヒットしたにもかかわらず、なぜか知名度は低い。⑭も素敵な曲でコーラスも良いんだけど、なぜかしら地味に聴こえる。見た目はみんな超ショートヘアでインパクト強いんだけどね。

Let It Flow ⑤Sittin’ Up In My Room ⑦Not Gon’ Cry ⑪Wey U ⑬Kissing You

90年代を代表する歌姫たち

ベイビーフェイスのお気に入りシンガーのひとり、トニー・ブラクストン。サントラからの5枚目のシングルで、彼女のセカンドアルバムからリードシングル「You’re Makin’ Me High」と両A面でリリースされた③。既に大々的にラジオでオンエアされてこともあって、全米チャートとR&Bチャートで共に1位を獲得してる。ベイビーフェイスが作った彼女のシングル曲は全部良かったなー、「Breathe Again」は今でも大好き。

デビューアルバムが世界中で600万枚以上も売れて、シングルカットした曲も軒並みヒットしてた頃のブランディ。⑤も全米チャートとR&Bチャートで2位を記録。ベシベシ聴こえてくるベースはスライの「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」からの引用。当然ミュージックビデオも作られてて、映画にも出演してるドナルド・フェイソンが彼氏役を演じてる。唯一無二の歌声と歌唱力で色んなアーティストの曲への客演歴多数、2013年のロバート・グラスパーの曲「What Are We Doing」は本当にカッコよくてめっちゃ聴いてた。

全米チャートとR&Bチャートでそれぞれ2位と1位を記録して、それまでの彼女のキャリアの中で最大のヒット曲になったメアリー・J・ブライジの⑦。アンジェラ・バセット演じるバーナディンの悲しい境遇をそのまま歌詞にした曲で、ミュージックビデオにもアンジェラのシーンがたくさん使われてる。映画を観なくてもバーナディンのエピソードが全部わかっちゃうくらい使われてて、映画関係者じゃなくてもあのネタバレ感はちょっと心配しちゃうレベル。

個人的にアルバムで一番好きな曲の⑪、歌うはお色気姉さまのシャンテ・ムーア。①の「Shoop Shoop」どころじゃない謎の言葉でスキャットしてるんだけど、よくあんなにカッコよく仕上げられるなーなんて思っちゃう。淡々としたトラックに合わせたシャンテの抑えたヴォーカルも、とても雰囲気があって素敵。シングルカットもエアプレイもされてないけど、隠れた名曲として語り継ぎたい。

同じ1995年に、パフ・ダディのバッド・ボーイズ・レコードから、初の女性アーティストとしてアルバムをリリースしたばかりだったフェイス・エヴァンス。デビュー前からレーベルメイトの作品に度々参加してたキャリアもあって、堂々とした歌いっぷりの⑬。この曲もワンテイクで録ったみたいなことが国内盤のライナノーツに書いてあった。

And I Gave My Love To You ⑮How Could You Call Her Baby

新人のお披露目も忘れてない

LaFace所属でアルバムもリリース予定だったソーニャ・マリーの⑨、でも残念ながらアルバムデビューは叶わず(2010年にインディーズでアルバムリリースを果たしてる)。サビ以外はポエトリーリーディングみたいに語りで構成されてて、雰囲気はシャーデーの「Kiss Of Life」みたいな曲。珍しくベイビーフェイス色が薄くて、言われないと分からないけど、これはこれでキレイな曲。

ホイットニー・ヒューストンとトニー・ブラクストンを足して割ったような歌声で、ベイビーフェイスもきっと気に入ったであろうシャナによる⑮。ホイットニーが発掘してきた新人で、当時はまだ10代。明るい未来が約束されたようなもんだと思ったけど、結局この一曲だけで姿を消してしまった。こんなに爆売れしたアルバムに収録されてるのに取り上げてもらえないなんて、アメリカのショービズ界怖え。

Count On Me

最後はホイットニーとシー・シー・ワイナンスのデュエット

アルバムからの4枚目のシングルで、この映画のサントラを締めくくるのに相応しく、変わらない友情について歌う⑯。ホイットニーの娘ボビー・クリスティーナ・ブラウンのゴッドマザーがシー・シー・ワイナンスで、それくらいふたりは私生活でも親友同士だったみたい。ホイットニーの葬儀でもシー・シー・ワイナンスが追悼の歌を歌ってたし、この曲のミュージックビデオのリラックスした雰囲気のふたりを見るとそれも分かる。それを知ってこの曲を聴くと何だか泣ける。

最後に

当たり前だけどベイビーフェイス色が強いアルバムなので、人によっては食傷気味もなっちゃうかもしれない。でも全般的に曲のクオリティーは高いし、参加アーティストについても申し分ないので聴きごたえはたっぷりある。サントラのコンセプトもしっかり整えられてるアルバムだし、映画音楽も担当してて尚且つこのクオリティーで仕上げたベイビーフェイスってやっぱりすごい。

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