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『JASON’S LYRIC ジェイソンズ・リリック』 名作サントラとして今でも名高いアルバム 当時は無名だったディアンジェロが手掛けた「U Will Know」は鳥肌もの(1994年作品)

概要

映画「ジェイソンズ・リリック」について

サントラブームを起こした映画「ニュー・ジャック・シティ」を制作したダグ・マクヘンリーは、90年代に活躍した映画監督兼プロデューサー。この方がいなければニュー・ジャック・シティは存在せず、サントラブームも生まれなかったと思うと足を向けて眠れない。そんな有り難いお方が、映画「ハウス・パーティ2」(こちらのサントラも名盤)の次にプロデューサーと監督を務めたのがジェイソンズ・リリック。

ニュー・ジャック・シティでG・マネーを演じたアレン・ペイン(ボビー・ブラウンに似てない?)と、ウィル・スミスの奥さんのジェイダ・ピンケットが主演の恋愛モノ。父親役のフォレスト・ウィテカー(グーグル検索で2番目に出てくるくらい笑福亭鶴瓶師匠に似てる)や、ジェイダ・ピンケットの兄ちゃん役にノーティ・バイ・ネイチャーのトリーチなど脇を固めるメンバーも何気に豪華。

電気店で真面目に働く優等生な兄のジェイソン(アレン・ペイン)と、アウトローな弟のジョシュア(ボキーム・ウッドバイン)の物語。兄弟が正反対の境遇で暮らすようになったのは、以前は優しかったのに戦争のせいで暴力的になってしまった父親が原因。このフォレスト・ウィテカーの演技が怖い、そりゃトラウマにもなるわって感じ。CDの裏ジャケットの写真もやばそうな雰囲気たっぷり。そんな父親を誤って射殺してしまった幼きジェイソン、そのせいでずっと悪夢にうなされてる。

ある日、お店にテレビを買いに来た可愛い女の子にジェイソンは一目惚れしちゃう。それがリリック(ジェイダ・ピンケット)。映画を見て、ジェイソンズ・リリックってタイトルはダブルミーニングだったのかと気づく。二人の恋は順調に進んでいく一方、全然更生しないジョシュアをほっておけないジェイソン。弟のせいでリリックとの関係も悪くなっていって、最終的に悲劇が起こってしまう。

サウンドトラックについて

自主制作で作られたせいもあってか、映画は日本では未公開。ロミオとジュリエットのブラックヴァージョンって言われたりしたらしいけど、どちらかと言えばカインとアベルの要素の方が強い印象だった。そんな映画の内容を知る人はあんまりいないけど、サントラの知名度は相当高い。

ブラック・メン・ユナイテッドの「U Will Know」が超強力なのもあるけど、素敵なコラボやカバー曲もあってサントラらしい企画が楽しい。しかもブラックミュージックコンピとしても、いちにを争うハイクオリティな内容。全米チャートで17位、R&Bチャートでは当然の1位を獲得してる。

全20曲というボリュームもすごいけど、こんなに幅広い参加アーティストもなかなか無い。プロデューサーやミュージシャンに関しても同じで、クレジット見たらびっくりする。こんなところにこんな人が!?みたいなのが随所にある。

トラックリスト

  1. “U Will Know”B.M.U. (Black Men United)
  2. “Forget I Was A G” The Whitehead Brothers
  3. “Candyman”LL Cool J
  4. “If Trouble Was Money”Mint Condition Featuring Albert Collins
  5. “Just Like My Papa” Tony Toni Toné
  6. “If You Think You’re Lonely Now” K-Ci Hailey of Jodeci
  7. “Rodeo Style” Jamecia
  8. “Up And Down”J.Quest
  9. “Walk Away”The Five Footer Crew/G Funk Era
  10. “Love Is The Key”LSD
  11. “No More Love”DRS
  12. “Crazy Love”Brian McKnight
  13. “That’s How It Is”Ahmad
  14. “First Round Draft Pick” The Twinz/G Funk Era
  15. “Brothers And Sistas”Jayo Felony
  16. “This City Needs Help” Buddy Guy
  17. “Nigga Sings The Blues” Spice
  18. “Jesse James” Scarface
  19. “Love Is Still Enough” Sovory
  20. “Many Rivers To Cross” Oleta Adams

トラックリスト詳細

U Will Know

もしかしたら2度とないかもしれないレベルのコラボ曲①

ブラック・メン・ユナイテッドというユニット名の通り、色んなアーティストが参加した①。以下詳細。

  • Written by
    ディアンジェロ
    ルーサー・アーチャー(ディアンジェロの兄弟らしい)
  • Produced by
    ブライアン・マックナイト
    ディアンジェロ
  • Bass guiter by
    ラファエル・ウィギンス(現ラファエル・サディーク)
  • Acoustic guiter by
    レニー・クラヴィッツ
  • Lead vocals by
    アーロン・ホール
    ブライアン・マックナイト
    クリストファー・ウィリアムズ
    ディアンジェロ
    エル・デバージ
    ジェラルド・レヴァート
    ジョー
    キース・スウェット
    ケヴォン・エドモンズ
    リル・ジョー
    メルヴィン・エドモンズ
    ラファエル・ウィギンス
    R・ケリー
    ストークリー
    テヴィン・キャンベル
    アッシャー
  • Background vocals by
    アフター7
    アル・B・シュア!
    ボーイズ・Ⅱ・メン
    ダミオン・ホール
    DRS
    エル・デバージ
    ジェラルド・レバート
    H-タウン
    イントロ
    ストークリー
    ポートレイト
    リル・ジョー
    シルク
    ソヴォリー
    トニー・トニー・トニー

さながら「We Are The World」なミュージックビデオ、クインシー・ジョーンズのポジションはブライアン・マックナイト。デビュー前の若きディアンジェロもチラッと登場してる。映画館ではこれが本編の前に流れてたらしい。1995年のアメリカンミュージックアワードでは、メンバー全員ではないけれどステージに登場して歌ってた。CDとは違うメンバーがリードを歌ってたり、ディアンジェロがピアノ弾いてたりとなかなかのレア映像。この曲を聴く為だけにCDを買っても損しない、そんな曲。

If Trouble Was Money ⑥If You Think You’re Lonely Now ⑫Crazy Love

サントラならではの極上なカバー曲

アルバート・コリンズの曲をミント・コンディションがカバー、本人も客演してる④。イントロからして超カッコいい、①でもリードを歌ってたストークリーの声も合ってる。プロデュースはミント・コンディション、なんならブルースのカバーアルバム作ればいいのにって思わせるくらいに良い出来栄え。ア・トライブ・コールド・クエストの「God Lives Through」がサンプリングされてるけど、無くてもいい。

ジョデシィのケイシーがソロで参加した⑥、原曲はボビー・ウーマックによるソウルクラシック。サンプリングソースとして有名な「Juicy Fruit」を歌ったグループ、エムトゥーメイを率いてたジェームス・エムトゥーメイがプロデュース。ステージですぐ上着脱いじゃうケイシーのイメージと違って、とってもジェントルな感じ。この路線に手ごたえを感じたのか、別のサントラでニュー・バースの「Wild Flower」をカバー。こちらでも素敵な歌声を披露してる。

ホント色んな人たちがカバーしてるヴァン・モリソンの「Crazy Love」、歌いたくなるのもわかるくらいの名曲。今回は①をディアンジェロと一緒にプロデュースしたブライアン・マックナイトがカバー。シングルカットされて全米チャートで45位、R&Bチャートで10位の記録。ギターはワー・ワー・ワトソンとデイヴィッド・T・ウォーカー、なんて贅沢な布陣。

Just Like My Papa

個人的にアルバムで一番お気に入り

単にトニー・トニー・トニーが好きだからでしょ?なんて言われそうだけど、いやいやなかなかの名曲だと思われる⑤。Performed by Tony Toni Toné with Papa Sonってクレジット表記があって、Papa Sonって誰だろうと思ってたら、リードヴォーカルをラファエル、ドゥエイン、ランディ、チャーリーのウィギンス兄弟が歌っててなるほどと納得。ちなみに彼らの3枚目のアルバム「Sons of Soul」に収録されてる「Tell Me Mama」も名曲で、2曲合わせてパパママソングとして推したい。

Forget I Was A G ⑦Rodeo Style ⑩Love Is The Key

2世アーティストたちが参加

いい感じのギターリフとクール・アンド・ザ・ギャングの「Jungle Boogie」からサンプリングされたゲッダンゲッダンが耳に残る、ホワイトヘッド・ブラザーズの②。どこのホワイトヘッドさんの兄弟かというと、「Ain’t No Stoppin’ Us Now」で有名な(ちなみに邦題は「恋はノンストップ」)マクファデン&ホワイトヘッドのジョン・ホワイトヘッドさんの息子さんたち。

オープニングからガッチリ耳をつかまれる、超キャッチーなジャメシアの⑦。お母さんはサウンズ・オブ・ブラックネスのアン・ネスビー、娘さんのパリス・ベネットもシンガーというヴォーカリスト家系。曲のクレジットを見ると、チャド・エリオットやらハーブ・ミドルトンやら有名なプロデューサーにまぎれてマイケル・ジャクソンって名前があるけど、あのマイケル・ジャクソンだよね多分。

詳細不明のアーティストだけど、渋いトラックがカッコいいLSDの⑩。2世なのはプロデューサーのQDⅢ、巨匠クインシー・ジョーンズの息子で本人名義のアルバムもある。彼は西海岸のアーティストをたくさんプロデュースしてるイメージがあるけど、そのイメージ通りにLSDもカリフォルニア出身。

Candyman ⑯This City Needs Help ⑳Many Rivers To Cross

ベテラン勢も参加

まずはLL・クール・Jとチャド・エリオットがプロデュースした③。キャンディマンって聞くとどうも殺人鬼をイメージしちゃうんだけど、甘い言葉で口説く色男って意味のスラングらしい。麻薬ディーラーの意味もあるらしいけど、彼のキャラ的に色男の方だと思う(LL・クール・JってLadies Love COOL Jamesって意味だし)。

ベテランっていうかシカゴブルースのレジェンド、バディ・ガイによる⑯。バディ・ガイが作った曲だけど、なんか軽い感じに聞こえてしまう、プロデューサーが良くないのか。ラップパート(って言えるシロモノでもないんだけど)もあるんだけど、きっと聴いた人のほとんどがいらないって感じるはず。

ナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースした、オリータ・アダムスの⑳。共にベテランさんで同年代のふたり、今も現役で定期的にアルバムも発表してる。原曲はジミー・クリフの大ヒット曲で、ゴスペル風アレンジの大げさなカバー。映画の最後のシーンで、あざといタイミングで流れてくるからちょっと笑っちゃう。

Up And Down ⑲Love Is Still Enough

全然知らないアーティストだけど素敵な楽曲

甘い声が素敵なJ・クエストの⑧、アルバムも1枚出してるアーティストだけど詳細不明。プロデューサーのアーロン・フリーダム・ライルスとアイク・リーⅢは、色んなアーティストとお仕事されてるみたいだけど全然知らなかった。知らない人たちばっかりだけどいい曲。

①にもバックコーラスで参加してるソヴォリー、こちらも詳細不明なアーティストだけどとってもキレイな曲の⑲。ベーシストのネイザン・ワッツが参加してる、他の演奏メンバーも凄腕っぽいなー。アルバムも1枚だけ出してるみたいだけど、きっと隠れた名盤とか言われてるはず。なんかそんな気になるくらい、いい雰囲気の曲。

Walk Away ⑭First Round Draft Pick

ウォーレン・Gがプロデュース

「G Funk Era」って表記から分かるようにウォーレン・Gのプロデュース、当然ながらのGファンクでピーヒャラ音が懐かしく響く。⑨は名曲なんだけど⑭はイマイチ。両曲ともベースはトニー・グリーン、キーボードはショーン・バーニー・トーマスが担当。ふたりともGファンクには欠かせないミュージシャン、ここでもカッコいい演奏が聴ける。ラップより演奏に耳を澄ますことをおすすめする。

No More Love ⑬That’s How It Is ⑮Brothers And Sistas ⑰Nigga Sings The Blues ⑱Jesse James

ウェストコーストおよびギャングスタ系の楽曲たち

「Gangsta Lean」のヒットで知られるコーラスグループ(+ラッパー)、D.R.S.の⑪。カリフォルニアのサクラメント出身らしく、やさぐれたボーイズ・Ⅱ・メンみたいな装い。ウェストコースト出身だし流行ってるからって、そんなにギャングスタ感出さなくてもいいのにね。

次は「Back in the Day」のヒットで知られるロサンゼルス出身のラッパー、アーマッドの⑬。メロウなトラックでのラップが得意なのかしら、この曲も柔らかくて聴き心地が良い。ちょくちょくサントラに参加してるアーティスト。

ラン・D.M.C.のジャム・マスター・ジェイに見いだされてデビューした、サンディエゴ出身のジェイヨ・フェロニー。Gファンクなトラックの⑮だけど、そっち系のプロデュースもいけるなんてさすがジャム・マスター・ジェイ。

ヘイワード出身で今やベイエリアの重鎮、まだまだ現役のスパイス1による⑰。2パックと仲良しだったらしく、スパイス1のアルバムに客演したりミュージックビデオにカメオ出演したりしてた。アルバムの後半にギャングスタ系が詰め込まれてて、このあたりでお腹いっぱいになっちゃう。

⑱で最後に登場するのはスカーフェイス。勝手に西海岸っぽいイメージを持ってるけど、テキサス州ヒューストン出身。西海岸と東海岸しか盛り上がってなかったヒップホップカルチャーだけど、90年代中頃にはアトランタを中心としたサザンヒップホップが隆盛するなんて誰が想像しただろうか。スカーフェイスはその一端を担ったと言ってもいいんじゃないかな。

最後に

今でも人気の高いサントラで、アマゾンとかの中古市場でも売れてるみたい(けっこう高額)。ディアンジェロが神様みたいなアーティストになった今、「U Will Know」について制作秘話とか当時の頃の話とか諸々、本人から教えてもらえそうじゃない?。そのあたりの話を織り込んで、松尾潔さんにもう一度ライナノーツを書いてもらって、リマスターで再販、いや売れるってホント。

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