映画「メン・イン・ブラック」について
バッド・ボーイズ、インディペンデンス・デイに続いてウィル・スミスが出演した映画がメン・イン・ブラック。バディものが多いウィル・スミス、この映画の相棒は今は日本ではコーヒーのおじさんとして認知されてるトミー・リー・ジョーンズ。
続編はもちろん、アニメ版まで作られるほど大ヒットした作品で、全世界で 5 億 8,940 万ドル以上の興行収入を記録。映画で二人がかけてたレイバンのサングラスもバカ売れしたし、日本では「麺・イン・ブラック」なんて名前のカップ麺まで売られてた(覚えてる?)。
アカデミー賞にも3部門ノミネートされたけど、残念ながら受賞したのはベストメイクアップ賞だけ。理由は同じ年にあのタイタニックも公開されてたから。ありとあらゆる賞を軒並み受賞してたタイタニック、逆にメイクアップ部門だけでも受賞できたのがラッキーだったくらい。
「黒い服の男たち」が実在してるって話は、陰謀論や都市伝説好きの一部のマニアには浸透してるらしい。映画の内容はわざわざ記載するまでもないくらいに知られてるけど、その都市伝説を題材にして作られた映画ってことは知られてなかったりする(当然私は知らなかった)。
実在するかしないかはさておき、「黒い服の男たち」の知名度は上がって、他の作品とかでも似たような設定を見ることが増えたよね。エージェントの見た目をパクる作品も多くて、映画「マトリックス」のエージェントやTV番組の「逃走中」のハンターなんかはそのまんまだし。
サウンドトラックについて
サントラは今回紹介するコンピ盤と、映画音楽を担当したダニー・エルフマンの作品を収録したスコア盤が存在。映画同様にコンピ盤はトリプルプラチナに認定されるほど大ヒット(全米チャートで2週連続の1位)。でもサントラと言いつつ、映画に使われた曲はほとんどない(この頃のサントラにはよくあったパターン)。
でも私みたいなサントラフリークにはそんなことどうでもよくて(映画も見ないことがほとんどだったし)、人気アーティストの新曲が収録されてるかとか、どんな新人アーティストが収録されてるのかとかが重要だった。その点で言うならば、このアルバムはすごい御馳走。
美メロ好きをくすぐるトレイ・ロレンツや、マイケル・ジャクソンの親族グループの3Tの参加が個人的に嬉しい。今ではR&B界隈で知らない人はいないって言うくらいメジャーな存在になったアリシア・キーズやデスティニーズ・チャイルドの若い歌声も聴ける。
ヒップホップに関しても、サントラにはよくあるこのアーティスト誰だろう的な曲もなく、本当にメジャーなアーティストしか収録されていない。もう映画なんて関係ない、売る気しかない、みたいな節操の無さも感じずにはいられないけどね。
トラックリスト
- MEN IN BLACK
WILL SMITH - WE JUST WANNA PARTY WITH YOU
SNOOP DOGGY DOG FEATURING JD - I’M FEELIN’ YOU
GINUWINE - DAH DEE DAH (SEXY THING)
ALICIA KEYS - JUST CRUISIN’
WILL SMITH - THE ‘NOTIC
THE ROOTS FEATURING D’ANGELO - MAKE YOU HAPPY
TREY LORENZ - ESCOBAR ’97
NAS - EROTIK CITY
EMOJA - SAME OL’ THING
A TRIBE CALLED QUEST - KILLING TIME
DESTINY’S CHILD - WAITING FOR LOVE
3T - CHANEL NO. FEVER
DE LA SOUL - SOME COW FONQUE (MORE TEA, VICAR)
BUCHSHOT LeFONQUE - M.I.B. MAIN THEME
DANNY ELFMAN - M.I.B. CLOSING THEME
DANNY ELFMAN
トラックリスト詳細
①MEN IN BLACK
ウィル・スミスの最初のソロシングル
ウィル・スミスがソロでもイケると証明した曲で、世界中で大ヒットした①。でも本国アメリカでは商業用シングルじゃなかったからチャートインなし(アルバムの販促用のシングルみたいなもので、当時のビルボードは販売されてないシングルは対象外にしてた)、でもオンエアランキングでは堂々の1位。パトリース・ラッシェンの「Forget Me Nots」をサンプリング、そのコーラスを歌ってるのはSWVのココちゃん。このコーラス部分、オリジナルは”I want you to remember”って歌ってるところを、映画に登場する記憶を消去する装置のニューラライザーにかけて”They won’t let you to remember”って歌ってる。こういうセンスがたまらない、シャレてる。
④DAH DEE DAH (SEXY THING) ⑪KILLING TIME
今や押しも押されぬアーティストの初々しい歌声
当時はまだ16歳で声も幼いアリシア・キーズの④、ここから大ヒットしたアルバム「Songs in A Minor」のリリースまで4年もかかることになる。この頃契約してたコロンビア・レコードとは馬が合わなかったみたいで、誰かと共作させられるのがとても嫌だったみたい。女性差別や年齢差別に苛まれて相当苦労してた話も聞いた。そんなこんなでコロンビアからリリースした楽曲はこの一曲だけ、確かに今聴けるアリシアの楽曲とは全く毛色が違うよね。
サバイバーとかチャーリーズ・エンジェルとかのイメージが強いデスティニーズ・チャイルド、デビュー当時を振り返るとこんなマッチョになるなんて想像もしなかった。まあこの頃は高校生だしね、見た目もまだまだ幼くて可愛かった。⑪をプロデュースしたのは、トニー!トニー!トニー!のドゥエイン・ウィギンス。彼の趣味趣向が反映されたソウルフルで渋い楽曲、私は大好きだけどやっぱり今のイメージとは違うよね。
③I’M FEELIN’ YOU ⑦MAKE YOU HAPPY ⑨EROTIK CITY ⑫WAITING FOR LOVE
甘いボーカルナンバーがこんなに収録されるのも珍しい
まずはジニュワインの③、プロデュースはこの頃の相方のティンバランドじゃなくてムーキーって人(ドネル・ジョーンズのファーストアルバムで何曲かプロデュースしてる)。スローなヒット曲が多いジニュワイン、こんなリズムで彼の歌声を聴くとなんか新鮮。
マライア・キャリーの「I’ll Be There」でジャーメインのパートを歌ってたトレイ・ロレンツ。私は大好きだったアーティストで、ファーストアルバムの「Trey Lorenz」も良く聴いてた。そのファーストアルバム以降、久しぶりに歌声を披露してくれたのが⑦で、マライア・キャリーと名プロデューサーのコリー・ルーニーとの共作。マライアのコーラスが欲しかったなー。
情報皆無のアーティストによる⑨(”イモージャ”って表記されてることが多いみたい)、教会で歌ってきましたみたいな熱い歌声。クレジットの表記をみると、どうやらコーラスグループっぽい。ジョデシィとかドゥルー・ヒルみたいな見た目を想像してしまうけど、たぶん合ってるよね。
ジャクソン5のメンバー、ティト・ジャクソンの3人の息子たちのグループの3T(予想つくだろうけどみんな名前にTがつく)。なのでマイケル・ジャクソンは叔父にあたる。そのマイケルをどことなく彷彿とさせる歌声のタリル・ジャクソンがリードを担当してる⑫、これも美メロな三連バラード。
⑩SAME OL’ THING ⑬CHANEL NO. FEVER
ネイティヴ・タンから参加
ア・トライブ・コールド・クエストの⑩、プロデュースはメンバーのQティップとアリ、そして忘れちゃいけないJ・ディラ(この頃はジェイ・ディー)の最強トリオによるウンマ。彼らのアルバムには収録されてない曲で、UKのみリリースされたシングル「The Jam EP」にだけ収録されてるみたい(この「Jam」って曲もカッコいいのよ)。サンプリングされてる曲はどれもマニアック、どこから見つけてくるんだろう。
デ・ラ・ソウルの⑬、香水の”シャネル・ナンバー・ファイブ”になぞらえたタイトルだよねきっと。国内盤のタイトルは”チャネル・ノー・フィーヴァー”って読み方になってる、まー確かに読めるね。オープニングのピコピコ音は、ウェンディ・カルロス(男性だった時の名前はウォルター・カルロス)の「Variations for Flute and Electronic Sound」からサンプリング。ニュースクールの方々って、選曲のセンスがオタクっぽいよね。
②WE JUST WANNA PARTY WITH YOU ⑥THE ‘NOTIC
ビッグネームによるコラボ曲
スヌープがデスロウレーベル以外からリリースした初めてのシングルで、ジャーメイン・デュプリとの初コラボでもある②。それまでのGファンクのテイストと全く違う雰囲気で、みんな戸惑ったのか全然ヒットせず。大ネタのクール&ザ・ギャングの「Get Down On It」のサンプリングも悲しく響く。ちなみにコーラスを歌ってるのは、⑦でも参加してるトレイ・ロレンツ。
抜群の相性の良さを感じるザ・ルーツとディアンジェロのコラボ⑥、ザ・ルーツの「The Hypnotic」以来の共演。キーボードはジェームズ・ポイザー(この頃はザ・ルーツのメンバーじゃなかった)、コーラスにエリカ・バドゥがちらっと参加(クレジット表記は”SOMEWHERE BURIED IN THE MIX”)。宇宙人ものの映画にちなんでか、アース・ウインド&ファイアーの「Shining Star」のコーラスを引用するなんてシャレてる。
⑤JUST CRUISIN’ ⑧ESCOBAR ’97
トラック・マスターズによるプロデュース曲
タイトル曲に続き登場のウィル・スミス、①と同じく⑤もシングルカットされてヒットしてる。サビを歌ってるのはティシーナ・アーノルドという女優さん。プロデューサーのトラック・マスターズによるリミックスもあって、そっちの方が彼女の歌声はたくさん聴ける。ミュージックビデオは曲の内容通り、ひたすらウィルがドライブしてるつまんない内容。途中で車が飛行機に変形したりして、妙なところでお金はかけてるみたい。アル・ジョンソンとジーン・カーンのデュエット「I’m Back for More」をサンプリング(名曲!)。
麻薬王パブロ・エスコバルから引用されたタイトルの⑧、学術的だったり文学的だったりするナズらしらがうかがえる。国内盤のタイトルは”エスカバー”ってカタカナになってて、あの頃は何の事か分かんなかった。ラヴ・アンリミテッドの「Move Me No Mountain」をサンプリング、この曲も名曲でよくカバーされたりパクられたりしてる。トラックマスターズのサンプリングのセンスが個人的にとてもツボ。
⑭SOME COW FONQUE (MORE TEA, VICAR)
ブランフォード・マルサリス率いるカッコいいジャズユニット
マルサリス兄弟の長男ブランフォードのユニット、バックショット・ルフォンクのファーストアルバムに収録されてる⑭。サントラで聴いてると、突然毛色の違う曲が流れてきてビックリする。ロイ・ハーグローヴやケニー・カークランドなどが参加してる豪華なユニットで、アルバムにはDJプレミアも参加してるらしい。ひょっとして冒頭のスクラッチはプレミアかもしれない。
⑮M.I.B. MAIN THEME ⑯M.I.B. CLOSING THEME
映画音楽を担当したダニー・エルフマン
最も知られてる映画音楽作曲家のひとり、ダニー・エルフマンの⑮⑯。メン・イン・ブラックシリーズの音楽はすべて彼が担当してる。スコア盤もあるのにわざわざコンピ盤に収録しないでも良さそうなもんだけど、全く感じないサントラ感を醸し出すためにねじ込まれたのかなーなんて勘ぐる。
最後に
このサントラの内容が、映画と関係なさすぎたことを反省してかどうかは知らないけど、二作目の映画のサントラはほぼダニー・エルフマンの楽曲で構成されてた。歌モノはウィル・スミスの「Black Suits Comin’ (Nod Ya Head)」とパグのフランクが歌う「I Will Survive」(一応グロリア・ゲイナーのカバー曲ね)の2曲だけ。三作目になると完全に歌モノはなくなって、四作目にいたってはサントラもなくなってた。
実はこのアルバム、ソニーミュージックから「<聴くシネマ名作選>サウンドトラック1000」というシリーズでリイシューされてる。CDだけじゃなくて、映画でも4K ULTRA HDのヴァージョンもリリースされてる。こんな風に90年代が見直されるなんて嬉しい。高望みするならば、メン・イン・ブラックシリーズの歌モノだけを集めたサントラとかリリースしてほしい。プレスリーからピットブルまでラインナップされた変なアルバムになっちゃうけど、宇宙人みたいなアーティストばっかりだしいいんじゃないかしら。
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