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『BOYZ N THE FOOD ボーイズン・ザ・フッド』 名作映画の名作サントラ 映画同様にサントラでもアイス・キューブの存在感が印象的 クインシー・ジョーンズ一派も参加(1991年作品)

概要

映画「ボーイズン・ザ・フッド」について

ボーイズン・ザ・フッドが公開されたのは、今から30年以上前の1991年。かなり前だけど今でも人気のある作品で、ストリートにまつわる貧困や暴力などを題材にした、いわゆるフッド・ムービーと呼ばれるジャンルが生まれるきっかけとなった名作。

監督はジョン・シングルトン、少年時代の体験を元にしたこの作品で、第64回アカデミー賞の監督賞と脚本賞でノミネート。史上最年少の24歳での監督賞ノミネートで、しかも黒人としては初という快挙。スパイク・リーが既にノミネートされてそうなイメージだけど、彼は第62回の脚本賞のみで監督賞はなし。

当然注目されたジョン・シングルトン、後にマイケル・ジャクソンの「Remember The Time」のPVを監督して、ジョン・ランディス(「Thriller」と「Black Or White」を監督)やマーティン・スコセッシ(「Bad」を監督)と肩を並べるまでになる(言い過ぎかも)。

映画はロサンゼルスのサウス・セントラル地区に住む主人公のトレ(キューバ・グッディング・ジュニア)と、幼馴染のダウ・ボーイ(アイス・キューブ)とリッキー(モーリス・チェスナット)の物語。父と子の絆、教育の大切さ、暴力の虚しさ、差別への怒りなど色々考えさせられる内容。

父親役のローレンス・フィッシュバーンがカッコいいし、少ししか出演してないけど母親役のアンジェラ・バセットも見逃せないけど、何よりアイス・キューブの演技が染みる。手に持ってた酒を捨てながら家に帰るラストシーンは印象的だった。弟のリッキーばかり可愛がる母親に冷たく扱われる可哀そうな役柄を見事に演じ切って、役者の才能を開花させたアイス・キューブ。その後は多くの映画に出演、監督業までこなすようになるなんて、きっと本人も予測できなかったと思う。

この映画は1991 年のカンヌ国際映画祭で「ある視点部門」に選出されて、上映されると業界の著名人たちがこぞって絶賛。おなじ年のサンダンス映画祭でたくさんのブラックムービーが上映されたこともあって、このあたりから黒人映画監督たちの活躍が目立つようになる。

そんな絶好のタイミングで一般公開されたけど、映画館で観客による銃撃事件や暴力事件が多発。非暴力を訴える内容なのにね。マスコミで大きく報道されたせいで上映禁止の危機に追い込まれるんだけど、上映を取りやめた映画館はほとんどなし。

サウンドトラックについて

サントラはR&Bチャートで1位、全米チャートでも12位を記録。ゴールドディスク認定されたくらいのヒットアルバムにもかかわらず、シングルでヒットした曲はテヴィン・キャンベルとトニー!・トニー!・トニー!だけ。おなじ年にリリースされた「ニュー・ジャック・シティ」のサントラが大ヒットしたせいでちょっと影が薄かったのかも。

映画に使われた曲は他にもあるんだけど、70年代や80年代前半の頃の曲だったから、アルバムのコンセプトに合わないとかの理由で入れなかったのかしら(もしくは権利とかそういった大人の事情とか)。映画の中でローレンス・フィッシュバーンが歌ってたファイブ・ステアステップスの「Ooh Child」とか、渋い選曲もあってもったいない。

映画音楽を担当したのはスタンリー・クラーク、ベーシストとしても映画音楽家としても名高い。チック・コリアと一緒に結成したバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」も有名だし、ソロアルバムの「スクール・デイズ」も名盤。担当した映画音楽も数知れず、とにかく多彩な御仁。

トラックリスト

  1. HOW TO SURVIVE IN SOUTH CENTRAL ICE CUBE
  2. JUST ASK ME TOTEVIN CAMPBELL
  3. MAMA DON’T TAKE NO MESSYO-YO
  4. GROWIN’ UP IN THE HOODCOMPTON’S MOST WANTED
  5. JUST A FRIENDLY GAME OF BASEBALL [REMIX] MAIN SOURCE
  6. ME AND YOUTONY! TONI! TONÉ!
  7. WORK IT OUTMONIE LOVE
  8. EVERY SINGLE WEEKENDKAM
  9. TOO YOUNG HI-FIVE
  10. HANGIN’ OUT2 LIVE CREW
  11. IT’S YOUR LIFETOO SHORT
  12. SPRIT [DOES ANYBODY CARE?] FORCE ONE NETWORK
  13. SETEMBRO QUINCY JONES
  14. BLACK ON BLACK CRIMESTANLEY CLARKE

トラックリスト詳細

HOW TO SURVIVE IN SOUTH CENTRAL

映画の顔とも言えるアイス・キューブ

そもそも映画のタイトルは、アイス・キューブが書いたイージー・Eの曲から引用されたもの。準主役のポジションだけど、映画の舞台のロサンジェルス生まれでもある彼がいなければ、名作と呼ばれる作品にはならなかったかも。映画の内容を表してる「サウス・セントラルで生き残る方法」ってタイトルもイケてる。プロデュースはアイス・キューブとドクター・ドレのいとこのサー・ジンクス(この方もロサンジェルス出身)で、サンプリングソースは王道のザップ「So Ruff, So Tuff」とファンカデリック「(Not Just)Knee Deep」。

MAMA DON’T TAKE NO MESS  ⑧EVERY SINGLE WEEKEND

アイス・キューブに縁のある二人

まずはアイス・キューブの一番弟子(もしくは右腕、共に勝手なイメージ)のヨー・ヨーの③。チラッと映画にも出演(ホントにチラッと)、でもアイス・キューブ同様にこれ以降たくさんの映画に出演するようになる。サンプリングソースはコモドアーズ「Brick House」とジェームス・ブラウン「Papa Don’t Take No Mess」。今やレジェンド級のプロデューサー、DJプーによる作品。

アイス・キューブのいとこであるカムの⑧、こちらもDJプーのプロデュースによる作品で彼のデビュー曲でもある。サンプリングソースはレニー・クラヴィッツ「Fear」とアイザック・ヘイズ「Breakthrough」。イントロのセリフの後ろで流れてる曲は、バーナード・ライトの「Haboglabotribin’」。プーさんのプロデュースで使われる元ネタはどれもカッコいい。こうやって元ネタ探しを始めて、70年代ソウルの沼にどっぷり浸かっていく。

GROWIN’ UP IN THE HOOD  ⑪IT’S YOUR LIFE

映画の舞台となるロサンジェルスのアーティスト

ロサンジェルスのフッド・ムービーなんだから、ロサンジェルス界隈のアーティストたちが多数参加(前述した3人もそう)。④のコンプトンズ・モスト・ウォンテッドもコンプトンって言ってるんだから当然カリフォルニアの出身。Gファンクが席巻する前の西海岸ヒップホップの重要なグループなんだけど、何となく過小評価されてるイメージ。ジョー・サイモンの「Theme From Cleopatra Jones」をサンプリングしたこの曲も、とってもカッコいいんだけどね。

カリフォルニアのオークランド出身で西海岸ヒップホップのパイオニアの一人、トゥー・ショートの⑪。オークランドでは彼の名前がついた道路や記念日があるくらいリスペクトされてる存在。サントラによく参加してるイメージがある。今は「TOO $HORT」って表記になってるけど、アルバムのジャケットを見るとまだ「TOO SHORT」だった。いつ頃からドルマークになったんだろう。サンプルソースはパーラメントの「Dr. FUNKENSTEIN」。

JUST A FRIENDLY GAME OF BASEBALL [REMIX]  ⑦WORK IT OUT ⑩HANGIN’ OUT

西海岸のヒップホップばかりじゃない

真反対のニューヨークを拠点とするメイン・ソースの⑤、新曲じゃないけどリミックスバージョンで参加。ジャズテイストのオリジナルバージョンも良いけど、こちらのファンクなトラックもカッコいい。ジャズもファンクも彼らの得意とするところ。ルビー・アンドリュースの「Didn’t I Fool You」がサンプリングソース。

ニュースクールにおける中心的存在のネイティヴ・タンに所属してた、ロンドン出身のモニー・ラヴによる⑦。このアルバムは東西関係なくギャングスタなラップが多いから、このポジティブな感じの曲が聞こえてくるとホッとする。プロデュースはDJジャジー・ジェフ、クール・アンド・ザ・ギャングの「More Funky Stuff」からサンプリングされたギターが気持ちいい。

マイアミから参加の2ライヴ・クルー⑩。サントラに参加するときは、なぜかいつもとは違ったテイストの楽曲にする彼ら。今回もエロなしマイアミ感なし、これはこれでカッコいいけどね。こちらもクール・アンド・ザ・ギャングからサンプリング、曲は「Jungle Jazz」。それとパブリック・エナミーの「Bring The Noise」で聴ける、フレイヴァー・フレイヴのあの声はどうしても耳に入ってきちゃう。

JUST ASK ME TO ⑫SPRIT [DOES ANYBODY CARE?]  ⑬SETEMBRO

クインシー・ジョーンズ一派も参加

クインシー・ジョーンズのレーベル、クエスト・レコードからリリースされたアルバムだからか、クインシー・ジョーンズの息のかかったアーティストたちが参加。まずは当時クエスト・レコードが勢力を挙げてプッシュしていたテヴィン・キャンベルの②、マイケルジャクソンの再来とか言われるくらいに天才少年扱いされてた。とにかく歌が上手くて可愛くて、わたしも大ファンだった。クインシー・ジョーンズ、ナラダ・マイケル・ウォルデン、プリンス、ベイビーフェイスといった大御所にプロデュースされて、どれもこれもヒットしちゃったんだからスゴかった。この曲はアル・B・シュア!(この人もクインシー・ジョーンズ一派)のプロデュースで、R&Bチャートで9位まで上昇。

オークランドを拠点にしてた⑫のフォース・ワン・ネットワークも一応ファミリーになるのかしら、このアルバムに参加したご縁で彼らのファーストアルバムをクエスト・レコードから出すことになったらしい。ちなみにこのグループ、デジタル・アンダーグラウンドのジミ・ドライトが結成して、のちにブラック・ストリートで活躍するデイブ・ホリスターが所属してたことでちょっと有名。

⑬でクインシー・ジョーンズご本人も登場、聞こえてくるボーカルはサラ・ヴォーンとテイク6という豪華な組み合わせ。でもこのアルバムの中ではなんか浮いてる感じ。無理やり詰め込まれた曲のような気もする、俺の曲も使っとけ、みたいな。

ME AND YOU ⑨TOO YOUNG

当時大人気だったグループ

トゥー・ショートと同じカリフォルニアのオークランド出身(ホントに西海岸勢が多い!)のトニー!・トニー!・トニー!による⑥、R&Bチャートでどのシングルもだいたい上位にランクインしてた人気グループ。サントラにも参加することが多くて、それも人気があった証拠だと思う。この頃から自分たちで曲をプロデュースするようになって、楽曲が見違えるほど良くなっていった。この曲もメンバーのラファエルのプロデュース。

テディ・ライリーのプロデュースしたファーストアルバムがめちゃくちゃ売れたハイ・ファイヴ、そのファーストアルバムに収録されていた⑨で参加。このグループもちょくちょくサントラに参加してるイメージある、人気あったもん。「I Like the Way (The Kissing Game)」なんて今でも好きな曲だもの、名曲。この曲で聞こえるラップ、メンバーの誰かがやってるものだと思ってたけど、実はノンクレジットでモブ・ディープ結成前の15歳のプロディジーが参加していたことを後に知った。

BLACK ON BLACK CRIME

映画音楽を担当したスタンリー・クラーク

最後に登場するのはスタンリー・クラーク、映画の内容ズバリなタイトルの⑭。本当にたくさんの映画音楽を担当していて、1991年はこのアルバムを含めて3作品も手掛けてるからスゴイ。「Theme from Boyz N the Hood」というキレイな曲もあるんだけどアルバムには未収録。スタンリー・クラークのアルバム「At the Movies」に収録されてるので、興味のある方は是非。

最後に

正直それほどキャッチーな曲が収録されてるアルバムじゃないけど、映画の内容とシンクロしてるような曲が多い印象。映画のセリフをサンプリングしてる曲もあるし、とってもサントラなアルバムだと思う。それとあのジャケットはカッコいい、モーリス・チェスナットが後ろすぎて不公平さを感じるけど。ザップやクール・モー・ディーとか、映画で使われた他の曲も収録した完全版みたいなカタチでのリイシューというのは無理なお願いかしら。

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