映画「モー・マネー」について
親族の多くがショービジネス界で活躍しているウェイアンズ一家(ホント何人いるのか分かんないくらいたくさん活躍してる)、その一人デイモン・ウェイアンズが製作総指揮、脚本、主演を務めたアクションコメディのモー・マネー。特に有名な人が出演してるわけでもなくB級感漂う雰囲気だけど、結構派手なアクションやカーチェイスがあったりして驚く。
ジョニーとシーモアは詐欺師の兄弟(デイモン・ウェイアンズとマーロン・ウェイアンズの本当の兄弟が演じてる)なんだけど、ある日出会ったアンバー(ステイシー・ダッシュ)に兄ちゃんのジョニーが恋をして真面目に仕事に就くことを決意。でも悪い癖は変わらず、その悪行が会社にばれちゃう。で、なんだかんだで犯罪組織に参加させられちゃって大変、みたいな内容。
見どころは登場人物のファッション。みんなオシャレで、90年代のブラックカルチャーファッションが良く分かる。そういえばあんな感じのオシャレをマネしてたなーって思い出した。
ヒロインのステイシー・ダッシュも可愛い、映画「クルーレス」(後にテレビシリーズにもなった青春モノ)を見てた人にはお馴染みの女優さんね。カニエ・ウェストの「All Falls Down」のミュージックビデオにも出演してて(他にもコモンとか色んなアーティストが出演してる)、こっちも可愛くて何回も見たなー。
映画の中で色んな人に扮装してるデイモン・ウェイアンズ、サタデー・ナイト・ライブで鍛えられただけあって笑える。今見るとブラックジョークが過ぎるシーンとかあったりするけど・・・。エディ・マーフィーもそうだけど、サタデー・ナイト・ライブ出身の俳優さんって形態模写とか得意よね。
サウンドトラックについて
ブラックミュージック好きには神様のジミー・ジャム&テリー・ルイスが総指揮のサントラで、しかも参加アーティストが超豪華ってことで発売当時は話題になった。ほぼ同時期にライバルのプロデューサーチーム、L.A.&ベイビーフェイス(こちらも同様に神)も映画のサントラをリリースしたこともあって、相乗効果で共に大ヒットを記録。
映画音楽を担当したのはジェイ・グルスカ。主にテレビドラマの音楽を担当してる作曲家で、有名な「ビバリーヒルズ高校白書」や「スーパーナチュラル」の音楽も担当してる。他にも数十のテレビドラマの作曲をしてるスゴイ人だけど、もともとAOR系のアーティストで歌も歌えるってのがまたスゴイ。マクサスってバンドも組んでて、1枚しかアルバム出してないけど、TOTOとかそっち系が好きな人たちはきっと気に入るはず。セカンドソロアルバムには、ネイザン・イーストとかスティーヴ・ルカサーとか有名なミュージシャンが参加してて、こちらもおすすめ。
トラックリスト
- MO’ MONEY GROOVE – MO’ MONEY ALLSTARS
- FOR YOU? FREE
- THE BEST THINGS IN LIFE ARE FREE – LUTHER VANDROSS AND JANET JACKSON
SPECIAL GUEST BBD AND RALPH TRESVANT - GIMME MY 2 DOLLARS
- ICE CREAM DREAM – MC LYTE
- AMBER, LET’S GO
- LET’S JUST RUN AWAY –JOHNNY GILL
- DON’T THROW THAT WAY
- I ADORE YOU – CARON WHEELER
- GET OFF MY BACK –
PUBLIC ENEMY FEATURING FLAVOR FLAV - FOREVER LOVE – COLOR ME BADD
- FUN AND GAMES WITH THE MAIL BOY
- MONEY CAN’T BUY YOU LOVE – RALPH TRESVANT
- HI JOHNNY BABY
- LET’S GET TOGETHER (SO GROOVY NOW) – KRUSH
- JOY – SOUNDS OF BLACKNESS
- A SISTER LIKE HER
- THE NEW STYLE – JAM & LEWIS
- I THINK I MIGHT GOTTA JOB
- A JOB AIN’T NUTHIN’ BUT WORK – BIG DADDY KANE
WITH SUPECIAL GUEST LO-KEY? - MY DREAM NEED DETAIL
- MY DEAR – MINT CONDITION
- BIG TIME
- BROTHER WILL – THE HARLEM YACHT CLUB
トラックリスト詳細
①MO’ MONEY GROOVE
オープニングはサントラ限定ユニット
たくさんのアーティストが参加してるオールスター型ユニットの①、その名もモー・マネー・オールスターズ。とは言えインストナンバーなので、色んな人の歌声が聴けたりするわけではない。でもラルフ・トレスヴァントとジョニー・ギルのシャウトを軸にした、ジャム&ルイスっぽい音が満載のカッコいい曲。リン・コリンズの「You Can’t Love Me if You Don’t Respect Me」がサンプリングされてる(この曲大好き)。クレジットを見てみるとコーラスに参加してるアーティストは、デイモン・ウェイアンズ、ジョニー・ギル、クラッシュ、ロー・キイ。言うほどオールスターではなかったりする。
③THE BEST THINGS IN LIFE ARE FREE
度肝を抜かれたルーサーとジャネットのコラボ
めっちゃ聴いてたなーこの曲、ホント大好きだった。ルーサー・ヴァンドロスとジャネット・ジャクソンに加えて、ベル・ビブ・デヴォーに(ちょっとだけ)ラルフ・トレスヴァントが参加してる超豪華な③。こちらの方がよっぽどオールスター感がある。どんなミュージックビデオなんだろうって楽しみにしてたら、ルーサーもジャネットも出てこないし曲もポップな感じにリミックスされてて残念だった思い出。代わりにデイモンとマーロンのウェイアンズ兄弟やステイシー・ダッシュなど映画の出演者が登場、映画のプロモーションというより映画の後日談みたいな雰囲気。やっぱりステイシー・ダッシュ可愛い。
⑦LET’S JUST RUN AWAY ⑬MONEY CAN’T BUY YOU LOVE
ジャム&ルイスに縁のある元ニュー・エディションのアーティスト
ニュー・エディションの頃からジャム&ルイスのお世話になってたジョニー・ギルとラルフ・トレスヴァント。ソロになってからも関係は続いてて、彼らがプロデュースしたヒット曲も多数あり。恩返しってわけでもないだろうけど、それぞれ⑦と⑬でサントラに参加。ジョニーは言わずもがな甘いバラードを披露、サントラに収録されてるバラードを世界一歌ってるシンガーじゃないかしら。
映画のオープニングで流れるラルフの曲は、第一弾シングルとしてリリースされてR&Bチャート2位まで上昇。詐欺師が恋に落ちる映画に流れてくる一発目の曲として、完璧なタイトルだなーなんて思った。ジャム&ルイスの曲は歌い慣れてるのか、2曲とも良い歌いっぷりで耳に残る。
⑪FOREVER LOVE
サントラコーラスグループ枠の元祖的なアーティスト
ファーストアルバムが大ヒットしたカラー・ミー・バッド、シングルカットされた曲も立て続けにヒットして勢いのあった彼ら。R&Bチャートより全米チャートでのランクインが多くて、この⑪も全米チャートで15位まで上昇したキレイなバラード。セカンドアルバムでもジャム&ルイスがプロデュースした曲「Choose」(名曲!)がヒットしてて、相性の良さを感じる。「ニュー・ジャック・シティ」に収録された「I Wanana Sex You Up」でデビューして、それから日本でも人気のあったドラマの「ビバリーヒルズ高校白書」にも参加したり(ドラマにまでカメオ出演してる)と、なにかとサントラにご縁のあるカラー・ミー・バッド。当時はすごく人気があったグループで、私も大ファンだったなー。
⑨I ADORE YOU
当時はUKブラックも盛り上がってた
当時はソウル・Ⅱ・ソウルからソロになって、ファーストアルバムをリリースした頃だったキャロン・ウィーラーの⑨。彼女の参加は意外だったけど、後にジャム&ルイスが再び総指揮を執った「ステラが恋に落ちて」のサントラにも参加してたから、お気に入りのアーティストだったのかもしれない。曲は絶滅しかけてたグラウンドビート、私は大好物なので嬉しかった。シングルカットされて、R&Bチャート12位。
⑤ICE CREAM DREAM ⑳A JOB AIN’T NUTHIN’ BUT WORK
珍しく歌モノじゃない曲もプロデュース
ジャム&ルイスは歌モノのイメージが強いけど、今回はラップを2曲プロデュースしてる。まずはMCライトの⑤、当時は国内盤のCDが発売されてなくて知名度は低かった彼女。私も当時は全然知らなかったけど、実は女性ラッパーの先駆者の一人と言われてるスゴイ人だった。サビを歌ってるのは、ジャム&ルイスの曲でたくさんバックコーラスを務めてきたリサ・キース。
ビッグ・ダディ・ケインがジャム&ルイスのトラックでラップしてるのが不思議な感覚の⑳、意外とイケる。スペシャルゲストで参加してるロー・キイもパースペクティヴ所属のアーティストで、メンバーのランス・アレクサンダーとプロフTはプロデューサーチームとして活躍。冒頭から聞こえてくる迫力のあるヴォーカルは、サウンズ・オブ・ブラックネスのアン・ネスビー。なかなか豪華なメンバー。
⑩GET OFF MY BACK
珍しくソロで参加のフレイヴァー・フレイヴ
ジャム&ルイスがアルバム中唯一プロデュースしてないのが、フレイヴァー・フレイヴの⑩。パブリック・エネミーといえばボム・スクワッドがプロデュースするのが常で、この曲も彼らによるもの。いくらジャム&ルイスといえども、パブリック・エネミーの色に手を加えるのは許さなかったのね。
⑮LET’S GET TOGETHER (SO GROOVY NOW) ⑯JOY ⑱THE NEW STYLE ㉒MY DEAR ㉔BROTHER WILL
パースペクティヴ・レコード所属のアーティスト
アルバムの発売元がジャム&ルイス所有のレーベル、パースペクティヴ・レコードなので所属アーティストが参加するのは当然。まずは高校生3人のガールズグループで、このアルバムでデビューしたクラッシュ。めっちゃキラキラしててキャッチーな⑮は、L.A.&ベイビーフェイスがプロデュースしたTLCを意識して作ったんだろうね。
ゴスペルをベースにした大所帯グループのサウンズ・オブ・ブラックネス。クラブ向けのトラックが珍しいけど、超カッコいい⑯。分厚いコーラスと、アン・ネスビーのボーカルにしびれる。2021年にリリースされたジャム&ルイス名義のアルバム「VOLUME ONE」にも参加したサウンズ・オブ・ブラックネス、なんと50年以上も活動を続けてる。
ジャム&ルイス名義で曲を発表するのは実はこれが初めての⑱、随所に匠の技を感じるミニマルなインストナンバー。「THE NEW STYLE」ってタイトルも何か意味あるのかなーなんて深読みしたくなる。
個人的に大ファンのバンド、ミント・コンディションも㉒で参加。ゴリゴリのファンクを期待してたんだけど、メロメロのバラードだったからちょっと残念だった。バラードも得意なバンドだからね、売れた曲もほとんどバラードだったし。良い曲なんだけど、でも物足りない。
アルバムのトリを飾ってるハーレム・ヨット・クラブの㉔、よくあるメンバーの詳細は不明というグループ。ジャム&ルイスお抱えのスタジオミュージシャンっぽい。クレジットを見ると演奏メンバーが実は豪華。ギターはプロデュースもしてるジェリービーン・ジョンソン、ドラムはミント・コンディションのストークリー、キーボードはジミー・ジャム。ジャムセッションしてたら何となく曲っぽいのが出来たから収録してみました、みたいなノリかもしれない。
最後に
ジャム&ルイスって名前や豪華な参加アーティストについて語られることが多いアルバムだけど、そこらの映画のサントラとは一線を画すクオリティの作品。曲間に挿入されている映画のダイアローグが絶妙、というか映画の雰囲気に合わせた曲を作ってることが良く分かる。さすがジャム&ルイス、このあたりにライバルチームのL.A.&ベイビーフェイスよりもプロデューススキルの高さを感じる。曲はL.A.&ベイビーフェイスが作ってプロデュースをジャム&ルイスがすればいい、なんて言われてたのを思い出す。サントラもそうだけど、映画もHDリマスターとかしてリイシューされないかしら。なんだったらCDとDVDの抱き合わせ販売とかでもいいな、聞いたことないけど。
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