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『JUICE ジュース』 2パックが俳優デビューした記念すべき作品のサントラ(でも本人は不参加) R&Bクラシックとして名高いテディ・ライリーの「IS IT GOOD TO YOU」収録(1991年作品)

概要

映画「ジュース」について

スパイク・リーの作品で長年にわたり撮影監督を務めていたアーネスト・ディッカーソン、その彼の監督デビュー作であり脚本も担当した作品がジュース。批評家からの評価も高く、公開直後の興行成績もまずまずの作品だったけど、映画の内容に触発された観客による映画館内での暴力事件が多発。

ニュー・ジャック・シティやボーイズン・ザ・フッドでも起きた社会現象で、ナーバスになっていた映画会社がポスターを撤退して宣伝をやめちゃって、動員数が激減してしまった不幸な作品。当然、銃を持つことへの嫌悪や非暴力を訴えてる内容なのに、どうして暴力事件に発展してしまうのか・・・。

学校をサボってはつるんで悪さしてる4人の高校生が、ふとしたきっかけで銃を手にしたことから日常が壊れていくクライムサスペンス、って内容の映画。CDジャケットを見れば分かるだろうけど、4人のうちの1人が2パック。なんとなく想像つくだろうけど、銃でトラブル起こすのが2パック。主人公はオマー・エップスが演じるQなんだけど、ジャケットには一番前で写ってる2パック。映画で観るとちょっと可愛くみえるくらいに若い。そんな彼がだんだん狂っていく様はなかなかの恐怖。

2パックが俳優デビューした作品として取り上げられることが多いけど、当時はラッパーとしてもデビュー前で知名度なんて全くなかった。当然サントラには不参加。この映画の撮影中にファーストアルバムの曲を書いてたらしい。そのアルバムが発売されたのが1991年の11月で、映画が公開されたのが1992年の1月。2パックとしては自身のアルバムの良いプロモーションになったのかも。

出演することになった経緯は、2パックが当時所属していたデジタル・アンダーグラウンド、そのメンバーのひとり(マネー・B)が映画のオーディションを受けるときにたまたま付き添いで来てたのがきっかけ。監督が試しに台本を読ませてみたら、役柄のイメージにぴったりハマったそうな。ラップの才能よりも先に役者の才能が開花したってわけか。

主人公がDJってところが関係するか知らないけど、この映画はミュージシャンがたくさん登場してて面白い。2パックたちと一緒にオーディションを受けていたノーティ・バイ・ネイチャーのトリーチは、チョイ役だけど敵対するグループのメンバーのひとりとして出演。アン・ヴォーグのシンディ・ヘロンは主人公の彼女役として出演、ほんとキレイ。DJコンテストの司会にクイーン・ラティファ、審査員にドクター・ドレとエド・ラヴァー(ふたりでMTVの番組の司会してたから多分その組み合わせ)。店の常連客にEPMDとか、その他いっぱい出演してるのでそれだけでも見てて面白いかも。

サウンドトラックについて

ハードな内容だけどエンターテインメント性も高い映画なので、サントラもそれにつられてなのかとても聴きやすい。もっとギャングスタしてても良さそうなんだけど、どっちかと言えばオシャレ。R&Bチャートで最高3位、全米チャートでも最高17位まで上昇してゴールド認定されたアルバム。

収録曲を見ればわかるけど、完全にヒップホップなアルバム。歌モノも数曲あるけど、それもヒップホップにグッと寄せて作られてる。この時期あたりからR&Bとヒップホップの融合というかシームレスな関係が出来上がっていって、それがアルバムにも反映され始めてる雰囲気がある。

プロデューサーチームのザ・ボム・スクワッドが映画音楽を担当してて、サントラの収録曲も数曲プロデュースしてる(②⑤⑧⑫)。ヒップホップやR&Bだけじゃなくポップスやレゲエのリミックスまで手掛けたりしてた職人集団、この人たちが関わってるおかげでサントラのクオリティが高い気がする。ちなみにメンバーの中にパブリック・エネミーのチャックDがいる、当然パブリック・エネミーのアルバムはほとんどザ・ボム・スクワッドによるプロデュース。

トラックリスト

  1. UPTOWN ANTHEM
    PERFORMED BY NAUGHTY BY NATURE
  2. JUICE (KNOW THE LEDGE)
    PERFORMED BY ERIC B. & RAKIM
  3. IS IT GOOD TO YOU
    PERFORMED BY TEDDY RILEY FEATURING TAMMY LUCAS
  4. SEX, MONEY & MURDER
    PERFORMED BY M.C. POOH
  5. NUFF’ RESPECT
    PERFORMED BY BIG DADDY KANE
  6. SO YOU WANT TO BE A GANGSTER
    PERFORMED BY TOO $HORT
  7. IT’S GOING DOWN
    PERFORMED BY EPMD
  8. DON’T BE AFRAID
    PERFORMED BY AARON HALL
  9. HE’S GAMIN’ ON YA’
    PERFORMED BY SALT N’ PEPA
  10. SHOOT’ EM UP
    PERFORMED BY CYPRESS HILL CREW
  11. FLIPSIDE
    PERFORMED BY JUVENILE COMMITTEE
  12. WHAT COULD BE BETTER BITCH
    PERFORMED BY SON OF BAZERK
  13. DOES YOUR MAN KNOW ABOUT ME
    PERFORMED BY RAHIEM
  14. PEOPLE GET READY (REMIX)
    PERFORMED BY THE BRAND NEW HEAVIES FEATURING N’DEA DAVENPORT

トラックリスト詳細

JUICE (KNOW THE LEDGE) ⑤NUFF’ RESPECT

映画の舞台ニューヨーク出身のアーティスト

映画のオープニングで流れるエリックB.&ラキムによる映画と同じタイトルの②、当然映画の主題歌。シングルとしてリリースされラップチャートで7位まで上昇、R&Bチャートでも36位を記録。カッコいい曲でミュージックビデオもこれまたカッコいい。プロモーションで映画のシーンが使われるのはさもありなんだけど、曲の良いタイミングで使われててなんか巧。映画のシーンと同じ場所でMVも撮影されたみたいで、映像に統一感があってそれも巧。2パックがライトを消す映像で曲が終わるのもイケてる。ナット・アダレイの「Rise, Sally Rise」のベースをサンプリング、このあたりの選曲もイケてる。

早口ラップの伊達男として名を馳せたビッグ・ダディ・ケインの⑤、こちらの曲でもシャープでぶっといラップが聴ける。クール&ザ・ギャングの「Cosmic Energy」の使い方が印象的。これもカッコいい曲なのにシングルにはならず、売れそうなのに。エリックB.&ラキムもビッグ・ダディ・ケインもこの頃のヒップホップ黄金期の代表的なアーティスト、DJが主人公の映画のサントラだけに参加は当然か。

IS IT GOOD TO YOU ⑧DON’T BE AFRAID

ガイのテディ・ライリーとアーロン・ホールがそれぞれソロで参加

珍しくテディ・ライリー名義で参加の③、オリジナルはヘヴィーD&ザ・ボーイズの曲(同じくテディ・ライリーのプロデュース)。オリジナルのコーラスパートを担当していたタミー・ルーカスがメインになって、より歌モノらしくブラッシュアップされてる。このドラムの音を聴くとテディの曲だなーって感じる。

テディ・ライリーのプロデュースから離れて、いつもとは違う雰囲気で歌うアーロン・ホールの⑧。シングルカットされてR&Bチャートで1位、全米チャートで44位の記録。アーロンのアルバムには別ヴァージョンが2つ収録されていて、シングルは更に別ヴァージョンでリリース。個人的には「Sex You Down Some Mo ‘」ヴァージョンが好き、オリジナルとは完全に別物になっちゃってるんだけどね。

SEX, MONEY & MURDER ⑥SO YOU WANT TO BE A GANGSTER

西海岸オークランドのアーティストたち

当時の状況を考えるとギャングスタものがどのサントラにも1曲は入ってるのが運命。このアルバムには④と⑥がそれ、プロデューサーのアント・バンクスも含めてみんなオークランドの出身のアーティスト、筋金入りの西海岸ヒップホップ。まずは④、DJプーがいたりMCプーがいたりいろんなプーさんがいるもんだ。MCプーは見た目もプーさん、声もどちらかと言えばプーさん。ブーツィー・コリンズの「Bootsy What’s the Name of This Town」のサンプリングがギャングスタものにしてはオシャレ。

サンプリングソースはグローバー・ワシントン・ジュニアの「Black Frost」とこちらもオシャレなんだけど、トラックはいつもペチペチした感じになるトゥー・ショートの⑥。このペチペチ感と彼の声が相まって何か耳に残るのが不思議、嫌いな人は全然受け入れないだろうけど。サントラにたびたび参加してるイメージが強いトゥー・ショート、当時はそれくらい人気があっただろうし今も現役ラッパーってのが凄い。さすがオークランドの英雄。

UPTOWN ANTHEM ⑦IT’S GOING DOWN ⑨HE’S GAMIN’ ON YA’ ⑩SHOOT’ EM UP

人気のヒップホップアーティストがそろって参加

当時は「OPP」がいたるところで流れてた記憶があるノーティ・バイ・ネイチャー、その彼らが映画のために書き下ろしたのが①。映画の舞台になってるハーレム地区あたりがアップタウンと呼ばれる場所で、まさにサントラのオープニングって感じ。映画を通じて2パックと仲良くなったみたいで、ミュージックビデオには4人目のメンバーみたいな感じで登場してる(赤い服に赤い帽子でよく目立つ)。2パックがニコニコしてて、なんか微笑ましい。ファンキー4+1の「That’s The Joint」からサビを引用してて、それもまたアップタウン万歳な感じでいい。

エリックとパリッシュがメイキングダラーズするってことでEPMD。映画に出てるのも、金くれんなら映画出るぜ、みたいな感じだったのだろうかといらぬ想像をしてしまう。そんな彼らの⑦、マーヴィン・ゲイの「I Want You」がカッコいい。ドラムはマウンテンの「Long Red」がサンプリングソースなんだけど、なんとライブヴァージョンを使用。歓声も混ざってて、その音がいい雰囲気を作ってる。なんかこういうのを聴くとすごいセンスだなーなんて思う、ただのお金大好きな人たちじゃないわ。

パーラメントの「Chocolate City」をがっつりサンプリングしたソルト・ン・ペパの⑨、プロデュースは彼らの育ての親のハービー・ラヴ・バグ。女性ラップグループとして初めてゴールドアルバムやプラチナアルバムの認定を受けたとか、女性ラップグループとして初めてグラミー賞を受賞したとか、とにかくヒップホップを女性にも浸透させた功績は大きい。「The First Ladies of Rap」って敬意を込めて呼ばれてるソルト・ン・ぺパ、サントラにも当然たくさん参加してる。アメリカではマリオ・ヴァン・ピーブルズが監督した彼女たちの自伝映画と、ドキュメンタリーが放送されたらしい。日本でも見れるのかな、見たいわ。

ある時ふとアルバムを見直してみると、こんな人たちが参加してたのかと気づいたりすることがある。⑩のサイプレス・ヒルがそんな感じ、アーティスト名がこのアルバムではCYPRESS HILL CREWってなってる。初期はそう名乗ってたのかしらね。デビューシングルの「THE PUNCKY FEEL ONE」がヒットしてるタイミングで、サントラが発売される幸運。先述のノーティ・バイ・ネイチャーもそうだけど、サントラに参加することで何かご利益があったのか、ヒット曲が生まれて、結果サントラに箔がついたカタチになってる。サントラの神様がいるのか、はたまたレコード会社のマーケティングによる作用なのかは不明。

FLIPSIDE ⑫WHAT COULD BE BETTER BITCH ⑬DOES YOUR MAN KNOW ABOUT ME

新人もしくは正体不明なアーティストたち

先述のサイプレス・ヒルみたいに、実は人気アーティストだったと勘違いしそうなジュヴナイル・コミッティの⑪。ラッパーのジュヴナイルとは無関係。リン・コリンズの「Think」をサンプリング、ジェイビーズが演奏してるからメチャカッコいい曲。プロデューサーはディミトリアス・シップという人なんだけど、息子さんが俳優をされてて2パックの伝記映画「All Eyes On Me」で2パック役を演じてるっていう奇跡的なご縁。似てるからってオーディション受けてみたら、まんまと受かってしまったらしい。アメリカの映画って、本人に似てなきゃダメみたいな風潮あるよね。

ザ・ボム・スクワッドのメンバー、ハンク・ショックリーの目に留まってデビューすることになったサン・オブ・バザークの⑫。プロデュースはもちろんザ・ボム・スクワッド。彼らのデビューアルバム「Bazerk Ba​​zerk Ba​​zerk」はザ・ボム・スクワッドの最高到達地点だ、なんてクエストラヴがべた褒めしてた。そんなこと言われたら聴いてみたくなる。

国内盤CDのライナノーツではラハイムという読みになってるけど、多分ファンキー4やフューリアス5にいた伝説の偉人、ラヒエムじゃないかと思う。曲のクレジットにもガイ・ウィリアムズって名前があるし(ウィキにラヒエムの本名として記載されてるのはガイ・トッド・ウィリアムズ)、でも別人なのかな。そんなラハイムの⑬、ジョージ・ベンソンの「Breezin’」をサンプリングしてることもあり、とってもスムースでオシャレな雰囲気。マーヴィン・ゲイの「I Want You」がここでもサンプリングされてる。

⑭PEOPLE GET READY (REMIX)

最後はイギリスのアシッドジャズから

なんで急にイギリス?アシッドジャズ?ってなるけど、この頃にザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズに加入したエンディア・ダヴェンポートはアトランタ出身のアメリカ人(クレジットはまだフィーチャリングって表記になってる)。彼女は既にレーベルと契約してたから、そのご縁でサントラに参加したんじゃないかと推測。リミックスって記載があるけど、(多分)再録音してダヴェンポートのヴォーカルを乗せたヴァージョンの⑭。断然こっちの方がカッコいい。ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズも実はサントラに参加することが多いグループ、当時はアシッドジャズも人気があったからね。ジャミロクワイやインコグニート、ガリアーノも私は大好きだった、なんだったら今も好き。

最後に

「大きな声では言えないが」って前置きがあったけど、ザ・ルーツのドラマーのクエストラヴが自身の著書の中で、このサントラはお気に入りのアルバムのひとつだって書いてた。私も個人的に1991年発売のサントラ(映画公開は1992年だけどサントラは1991年の大晦日に発売)でトップスリーに入るくらい好きなアルバム。

国内盤のライナノーツに書いてあったけど、当初はパブリック・エネミーのフレイヴァー・フレイヴのソロ曲もアルバムに収録される予定だったそうな。「Change」ってタイトルまで決まってたのに残念。もしリイシューされることがあるならその曲も収録されるといいな。

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